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原発推進派報道機関による影響 3 製造過程におけるカオス 蔓延した組織の老朽化 ―金属疲労や構造の脆弱化、腐食した水の化学的組成、中性子爆撃など― は、原子力規制委員会(NRC)や産業界の独善性と傲慢さにより、慣らされてきた。ひび割れたSGTパイプのように、老朽化した機械は性能を悪くし、予想できない方法で安全性を弱める。“包括的な安全性の課題” (類似する型または原子炉の種類に適用する)として定義された数十の過去の問題は、緊急措置の必要がないと公式に示された。多くの包括的課題がまったく解決されていないのだ。
基本的な問題が複合してできたもの ―不正確で未解決の、もしくは忘れられた仮説、避けられない不安定さと誤作動、老朽化した部品と消耗した資材― は、無数の調整、修理、部品の交換を行うことで、当初設計された操作上のパラメータに重大で予測できない狂いを引き起こした。
パラメータは手直しされ、設計は修正され、独創的にアップグレードされ、非公式に実施されてきた。複数の手直しは、複数の青写真を生み出した。 ―たいてい時代遅れで、貧弱な修正であり、そして緊急時には利用できない(スリーマイル島のときのように)。彼らの言い訳とともに、数え切れない修正の許可がなされたが、詳細と手順に対する関心を無駄にしただけだった。「すべての手直しはいくつかの問題が想定されます」と原子力情報資料サービスのポール・ガンター(Paul Gunter)は言う。「問題は、安全性の限界を描くにあたり、低下を招くのです」
1990年に、米国会計検査院(GAO)は、113基ある国内の原子力発電所のうち少なくとも72基は稼動しているが、採算に合わない生産を得ている疑いがあると報告した。コンピュータのソフトウェアが不適当であることを証明していて、ハードウエアは障害を起こした。加えて、数千のバルブ、プラグ、ポンプ、モーター、継電器、交換機、計器、空気排出器、ダクト、配水管、バルブ栓、ハト目金、電線、配電盤、警報装置、ディーゼル発電機、電気母線、符号変換器、抵抗器、タービン、蓄電器、変圧器、ノズル、ヒューズ、ナット、ボルト、そして溶接が障害を起こしている。 ―このことはすなわち、さまざまな状況のもと、腐食したり、ショートしたり、融解したり、分解したり、破断または固定される結果となる。
近代のカオス理論は、「安全性分析報告書(SAR) ―産業界より提出され、原子力規制委員会(NRC)に認定されたもの― が、すべての深刻な原子炉事故が起こりうる、因果関係を予測することはない」と述べている。(福島の地震と津波といったワンツーパンチがそれを明らかにしている) このような予測をすることは、人間の知識の領域やキャパシティー、想像を超えている。準備状況、スペック、選択した仮説や安全なオペレーションについて議論することは、もはや当てはまらない。技術者や科学者の大部分は、自分自身のせまい範囲の専門分野にしか精通していない。『
カオス―新しい科学をつくる 』の著者であるジェームズ・グリック(James Gleick)は、「技術者たちはその分野の慣行や、自分自身が得た教育の偶然の道筋によって偏った意見を持つようになる」と述べている。
ヒューマンファクター(人間工学)では、重要な予想できないリスクを紹介している。多数の原発従事者とシフト労働者の力で構築された、―彼ら唯一無二の個々による配慮、知っていることの守秘、判断したことの記憶、心身で体得したもの、幻滅、憤り、反感および動転―
マン・マシン・インターフェース は、妥協の連鎖に結びつく、誤りに陥りやすい繋がりである。
実質的確証破壊 (Virtually Assured Destruction) cf.相互確証破壊
原子炉のオペレーションは、安全性をを犠牲にして合理化されている。原子炉は、少ない監視のもと、出力量のキャパシティを超えるような、より長い時間、よりハードに稼動している。オペレーションの起動や停止といった段階で起こる、誤作動を起こしやすい条件で、― 一時的な電力の急増や不安定な状態― テストや安全性の分析は、燃料を補給するための、運転停止の際に行われてきたが、次に行う起動の後では意味がないことを証明するだろう。
施設は、安全性を犠牲にして、原子炉の運転停止を最小限度に抑え、稼動を最大限に行っている。バックアップの安全システムをテストするという信頼性と品質保証は、完全にないがしろにされ、延期され、省略されてきた。経済的要因を最も効果的に取り組んできたヒューストン電力(Houston Light& Power)は、近年、燃料補給のための運転停止を少なくする記録を打ち立てた。集中を要する放射線処理を差し止めたか、アクセスを限定して、稼働中にシステムと構成機器をテストしたのか。オンラインメンテナンス中に入れ換えを行う際の付随現象は、いわゆる“余剰な”安全システムを意味する。 ―“多重防御”のバックボーンとしてかつてはもてはやされた― その安全システムは、フル稼動中の原子炉では機能しない。
See : keith harmon snow , Vermont Yankee Nuclear Power Station : A Second Lease on Half-Life? Montague Reporter , December 2003
法人のダウンサイジング(規模縮小、リストラ)は、才能があり適格性をもつ従業員を解雇した。残った者は、タイトな経費やスケジュールで窒息させられ、日々の業務をダイナミックに行うことからかけ離れた法人の命令に追い詰められている。利益第一主義は、司令室にいる操縦者を、ますます反応装置の狂いや操作上のミスを冒す傾向に導くといえよう。操縦者(技師) ―原子炉抑制が効かない状態を、非常事態に取り繕うには、極度の緊張を強いられる― は、不確実な瞬間に、コントロールの限界点を超えるシステムを認めてしまうかもしれない。(このことは、まさに福島で起こったことだ。原子炉技師および東京電力(Tepco)幹部は、経済ロスへの恐怖から、優先順位に従って対処する措置 ―海水を融解している原子炉に投入すること― を一度は行ったものの先延ばしにした。するべきことはほとんど行われず、不確かさばかりで、遅すぎた)
従業員は安全性について正当に心配している。不適当な処置や原子力を扱う場での手抜き作業について、報復の恐怖なしに話すことはできない。原子力規制委員会(NRC)は、いやという程、保安通報者を裏切ってきた。そして、原子力の内部告発を罰してきた。
自然は騙されない 規制緩和は、 ―テクノロジーにおける歴史的な妥協に加えて― 今日のアメリカにおいて、原子力発電にとってとどめの一撃であることは明白である。施設は通常の市場動向からかけ離れた、莫大な補助金によって長い間保護されてきたが、今や敵対する競争にさらされている。 一部の施設は必死で、堅く保持されているが旧式で割りの悪い原子力経済に しがみついているだろうと思われる。だが、プライス・アンダーソン法で保護された経営陣たちは、原子炉が破綻した際にも影響はないと考える根拠も指摘される。
放射性施設の改善は、10億ドル産業を自ら作り出すということも広く知られるべきだ。
報道関係者(および法人が投資するプロパガンダ制度)は、安全性、不採算性、不要な停滞、非合法の廃止措置、定期的な放射能放出や原子力用地の周囲に群がる病気の蔓延といった原子力の難問を圧倒的に軽視する。脅しに屈して知らないふりをしたり、わずかな科学知識で自己検閲する人々は、自分自身を、脅威と比較して全く準備ができていない状態にしている。慎重になることで、環境ジャーナリスト協会(SEJ)が、最悪でも、このことで総括を続けてきた原子力の専門家の意見を討議するための協議会を発起するよう、要求するように思われる。だが、見かけほど限られた問題ではない。原子力の非常事態により、国内の不安定を引き起こす可能性は、実体として対外政策の意味合いを持つ。(経済や政治への波及が、私たちに完璧な社会的衰弱を引き起こすのは言うまでもない)
報道関係者は、ノーベル物理学者リチャード・P・ファインマン(Richard Feynman)が提示した驚くべき分析を再考するのが賢明であろう。「設備や人命の喪失を伴う誤作動の確率に関しては、莫大な見解の相違があるように思われる」ファインマンはこう書いている。「見積りの範囲は概ね100人に1人から10万人に1人だ。技術従事者ほど割合は高く、管理職ではかなり低い割合になるだろう。合意できない原因と結果はなにか? 機械に対する経営陣の根拠のない信頼はどこから来るのだろうか?
技術的問題への意見は無視されるか、寛大に扱われる。ファインマン は強調する。「容認と成功は、安全性の根拠として受け入れらるべきではない。失敗は、期待されたデザインではないからだ。失敗は何かが誤っているという警告だ。設備は期待どおりには動かない。従って、まるで見当違いの逸脱が起こっていても、予想外の通常とは全く異なる方法で、稼動できる危険があるのだ。この危険が以前に大災害を引き起こさなかったという事実は、次回もまた起こらないという保証は全くない。
リチャード・P・ファインマンは、原子力発電所について述べているのではないが、まるでそのように思える。「固体ロケットブースターのOリングは、腐食するようデザインされていなかった」と、ファインマンは、論文『スペースシャトルの信頼性における個人的見解(原題:Personal Observations on Reliability of the Shuttle)』に書いている。
※訳者注:スペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故は、Oリングのシール性能が失われたことが直接的原因とされている。 チャレンジャー号爆発事故における大統領諮問委員会の報告書付記Fに埋もれた、簡潔だが奥深い陳述である。「腐食は悪いことが起こる糸口だった」ファインマンは、断定する。「何ものからも安全性が推定されることはない。成功したテクノロジーにとって、広報活動よりも現実を優先させるべきである。自然は騙されないのだから」
原文:2011.6.24 By Keith Harmon Snow
http://www.zcommunications.org/the-repercussions-of-a-pro-nuclear-corporate-press-by-keith-harmon-snow
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